ハタオリドリの雛を保護・手乗りに

「ハタオリドリ」という鳥がいる。
漢字で書くと「機織り鳥」、文字通りというか何というか、藁等を編むようにして巣を作り、その巣は確かに編み物のようだ。
ハタオリドリについて若干の知識を得たのは小学校に入ったばかりの頃(図鑑等を丸覚えするガキだった)で、主にアフリカに分布していて、集団で行動するものは時に10万羽単位の巨大なコロニーを作り、農作物を害する、実はスズメの近縁種だ、というのが頭に残ったままではいたわけだが。

はてさてその後、何の因果かタイに住むことになり、まもなくハタオリドリは東南アジアにも一部が分布していると知った。
そしてこちらの人はその巣を珍重し(?)、よく軒先に吊るしてある。長女の学校の近くの店でも、10個近くを軒先に吊るしてある。
 
ある日、ヨメと長女が庭で私を呼ぶので行ってみると、長女のブランコ(小)を吊るしてあるパンヤの木のずっと上の方に、3つの巣がぶら下がっていた。
「おお、ハタオリドリの巣だなあ!」
聞くと、長女が見つけたらしい。
まあその辺にいる鳥なんだし、周辺環境的に庭に巣の1つや2つあっても不思議じゃないのだが、しかしまあ、綺麗に作るもんだと感心した。
 
巣を見つけてからしばらくして天気が崩れて、その悪天候は何日か続いた。
まもなく昼食だと呼ばれて階下に降りた時、雨が止んでいたので庭を少し歩いてみたら、例のハタオリドリの巣が1つ、樹の下に落ちていた。

落ちちゃったのか、まあこの風だからなあ、と考えながら巣を持ち上げてみた。へえ、よく出来ている・・・ん?

・・・中を覗くと、まだ目も開いていない丸裸の雛が2羽見えた。

え。

えらいこっちゃあ!


ヨメに、巣が落ちて中に雛がいた、大至急でゆで卵を1つ作れ! と叫ぶ。
急いで作業用テーブルの上に運び、集り始めていた肉食の赤蟻を払い除けつつ巣から雛を取り出す。
奥にもう1羽いて、計3羽の雛を保護。私のうどんがのびはじめる。
 
保護直後の雛は丸裸で、十姉妹・文鳥を手乗りに仕込んだ経験から勘案すると、一番大きな個体でも、せいぜい孵化後1週間というところだ。
前述の鳥たちの場合、通常、目が開くのは孵化後約10日、手乗りに仕込む場合の巣引き(雛を巣から取る)は14日目以降が目安だったはず。
インプリンティング(親と認識する「刷り込み」のこと)の観点から有利なのにもかかわらず、目が開く前の巣引きを避けるのは、死なせてしまうリスクが非常に大きいからだ。(この辺はガキの頃の知識そのまんま)
それも勝手が全くわからない野鳥が相手である。
 
現状がいかに厳しい状況なのかは、雛を見た瞬間に既に理解できている、逡巡している暇は1秒も無い。
さて何から手を付けるか?そんなもん保温に決まってるじゃねーか言わせんな恥ずかしい。
小鳥の体温は約43度、それ以下の低体温が続けば、死ぬしかない。
唯一の救いは3羽いるので、お互いの体温で多少は保温されることだ。

その辺の小物入れにしている小さめの籠の中身を放り出し、手早くティッシュを敷き詰め、雛を入れて更に周りを囲うようにティッシュを追加。
熱源は・・・納豆等を作る時に保温に使う白熱球があるが、あれは他に箱等が必要だし、こんな場合は特に温度調整が難点だ。
数秒考えた末、2階に持って行き、仕事用のノートPCのキーボードの上に籠を置き、その横に壁に掛けてある小型の温度計を外して置いてみる。
その間に餌だ、雛達は力無くも首を持ち上げ、震えながら声も無く口を開けて待っているのだ。

何も用意がないので、とりあえずの間に合わせとして冷蔵庫にあった冷ご飯を茶碗ですり潰し、卵が概ね茹で上がるのを待って黄身を少し加え、微量の蜂蜜と湯を加え、よく練り合わせて冷ます。冷ましながら竹の箸をナイフで削り、餌やり用のヘラを作りながら、必要なものを考える。

餌を持って上に行くと、温度計は41度を示していた。3羽いるのでこれで上等と判断し、そのままの場所で餌をやる。何とか「そ嚢」(首のところにある餌をためる袋)をふくらませる程度には食べさせた・・・そ嚢がそれなりに大きいということは、主食は穀類でOKか。
更に布切れを加えたりして籠の保温性を高め、上がって来たヨメに注意を与え、餌を買いに出掛ける・・・前に、うどんを食べた。

ああ、これを餌にすれば消化にいいんじゃなかろうかってな位に、それはもうのびのびだった。
 
その後、車を走らせて餌を買って来てすり鉢で砕き、コメの粉末やら卵黄やらとすり合わせて蜂蜜を少々加え、ボレー粉が無かったので卵の殻の粉末を少し加えたりと餌を工夫し、こまめに与え続けた。
近場で日本のような餌が手に入らなかったので、アドリブで良かれと思うように作ったのだ。
かくして雛たちは、揃って最初の夜をなんとか生きて乗り越えることができた。


保護の翌日夕刻、最初の1羽が死んだ。一番大きく、一番元気な雛だったので、正直意外だった。
元より全滅の可能性が非常に高いと理解は出来ていても、覚悟はしていても、やはり暗然とした気持ちになる。
大きなものほど体力があるはずなのに加え、元気さゆえに、最も生き残る可能性が高いと思っていた雛だったので余計だった。

更にその翌朝、衰弱していた一番小さな雛が後を追った。

2羽を一緒に、庭の「ブア・サワン」という木の根元に埋めた。
「ブア・サワン」、タイ語で「天国の蓮」。

長女が庭のどこかから花を摘んできて、樹の根元に供えてやっていた。
 
残ったのは真ん中の雛だけ。
しかし皆の心配を他所に、徐々に食欲が旺盛になり、鳴き声も大きくなり、羽もぐんぐん伸び始める。山場は越えたようだ。
「こむぎ」と名付けられたその雛、数日後には目も開き、更に伸びた羽により保温の心配もほぼ無くなった。
 
完全に我々を親と認識した「こむぎ」は、日々順調に成長した。
長女の学校が始まる日が迫り、やむを得ず買い物に出た際には車で連れ出したりもしたが、走行中の車の中でも餌をねだる始末で余裕綽々。
恐らく私は、片手で車を運転しながら、もう片手でハタオリドリの雛に餌を与えた最初の人類となった。
*非常に危険なので真似しちゃダメ。
 
そして概ね羽の生え揃った保護から14日後、入れていた箱から飛び出し、少しではあるがついに飛んだ。夕方には、部屋の端から端までを見事に飛んでみせた。

・・・って、こむぎさん、早い、早いよ!
まだ孵化後3週間位だぞどう見ても! 文鳥だと飛ぶまでに4週間かそれ以上かかるはずだぞ!

こむぎ「文鳥とは違うのだよ、文鳥とは!」

さすが野生の生まれ、なかなかに高性能らしい。
 
参考までに、落ちていた巣をアップで。
筒状の入り口は、産み逃げ(托卵)をする鳥が侵入できないようにするためらしい、確かにあの辺の鳥(カッコウ・ホホホギスの類)は一回り大きいので、効果的なのかもしれない。

なお我が家のこむぎさんは、ハタオリドリの一種「キムネコウヨウジャク」である。





ところでこのこむぎさん。
保護から3週間で自分で餌を食べるようになり、その後は・・・すっかり手乗り鳥となって我が家で放し飼いにされている。
窓とか扉開いてても逃げないし、名前を呼べば飛んで来るし、人の周りから離れない。
イタズラ好きだが性格も穏やかで人懐っこく、飼い鳥には向いているのかもしれない。

困るのは、我が家では私もヨメも、基本的に1日中家にいるわけで、つまり1日中付きまとわれるのだ。
しかもPC周りが好きらしく、モニタに留っている位ならいいが、キーボードの上を跳ね回ってタイプしている指にじゃれてみたり、コーヒーを飲んでみたり、画面を覗き込んでマウスカーソルに戦いを挑んだりと、とにかく邪魔なことこの上ない。かわいいから許すけど。

ちょうど私の右手で眠ってしまっていたので、左手でそっとムービーメーカーを立ち上げてカメラの前に移動させ、PCのウェブカムで寝起きの様子を動画撮影してみた。





なお、夜は本棚の上段奥私の枕の隅をねぐらにしている。
あと「プリッツ」が大好きなようで、いつも下の娘と一緒に食べている。

窓や扉から何度も飛び出しているが、そこらを一回りして当たり前のように戻って来る。
もうダメだこいつ。

追記
コムギさん、その後なかなかおかしなことになっています…
コムギさん総合案内
 

2011/08/28

2018/04/23(月)
久々にイカGET
2018/04/22(日)
釣らずに大物GET!
2018/04/13(金)
魚っ気はあるんだがなー
Keyword : ハタオリドリ,巣,雛,キムネコウヨウジャク

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